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「仮想儀礼」とは
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AIテキスト読み上げ【仮想儀礼】読書感想とドラマとの相違点 - 昭和なラジオ | stand.fm
2023年12月3日にプレミアムドラマ(NHKBS)で放送開始した「仮想儀礼」が面白いので、原作を読んでみました。
「仮想儀礼
それは金のためにインチキな宗教をでっち上げたおろかな二人が
真理と営利を追求する
有難い物語である」
ドラマ冒頭部分のセリフですが、内容そのままです。
ドラマは第5回までが放送されました。全10回の作品。
主要キャストは、教祖桐生慧海こと鈴木正彦役青柳翔 EXILE TRIBEと、相棒矢口誠役大東俊介
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脚本は港岳彦(第1回~第3回)
第4回からは江頭美智留が加わっています。
音楽は岩代太郎、これがまた私好みで、ワクワクしています♪
残念ながら「仮想儀礼」の音源は見当たらず、他の有名作品を↓
韓国映画「殺人の追憶」の音楽も岩代太郎
ナレーションは大人気声優さんの津田健次郎
制作はNHKとテレビマンユニオン(世界サブカルチャー史欲望の系譜、世界ふしぎ発見、情熱大陸)
演出は同じくテレビマンユニオンと森義隆(ガイアの夜明け、「宇宙兄弟」)
同タイトルの原作小説は、篠田節子(「女たちのジハード」)の作品↓
『仮想儀礼』ネタバレ読書感想とドラマとの相違点
先述した通り、ドラマの第1回を観てこれは面白そうだと原作も手に取った次第で、ドラマと原作が大きく違うことはよくあることですし、何よりまず、読む前から読み終わるかどうか不安になる厚さ3㎝はあろうかという上下巻に圧倒されました。
不勉強でして作者篠田節子も存じ上げず、私にとって初篠田節子作品となりましたが、読んでよかった、ドラマ化されていなければ手に取ることはなかったであろう作品とも思いましたので、よくぞドラマ化してくれた、という感想。
厚さに圧倒されながらも、読み始めると実に読みやすく、登場人物が多いにもかかわらずしっかり描き分けられているので、登場人物の名前が覚えられなくなってきている老いた私でも混乱することなく、物語にもスピード感があり、引き込まれているうちに読み終わってしまいました。
図書館で借りた本でしたので返却期限が気になり、正直飛ばし読みをした部分もありましたが、連載中に知っていたら夢中になって次の回が出るまでじっくり何度も読んだのではないか、とも思います。それくらい作者の篠田節子にハマりました。
ドラマきっかけですので、ドラマとの相違点にも注目しながら読み進めましたが、脚本の港岳彦も原作の面白い部分をうまいコト引き出しているなと感じました。
原作『仮想儀礼』はドラマ「仮想儀礼」とは雰囲気が違います。
話の流れは今までのところほぼ同じですが、原作では登場人物の抱えているものがさらに「ディープ」で「ヘヴィ」で「ダーク」。
ドラマは好い感じでコメディ色が強く、原作はブラックコメディからサスペンス、ホラーに変容していく壮大なストーリー。
バッドエンドと言っていいような結末ですが、読後の達成感強く、胸の悪くなるような展開だったにもかかわらず、爽快感を得られた何とも不思議な作品です。
ネタバレですが、ドラマ第5話で収監されていた少年、竹内由宇太(齋藤潤)は原作では「聖泉真法会」でボヤをだし飛び出した後、正彦たちと再会することはありません。
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「聖泉真法会」とは別の宗教団体でリンチ殺人に加わり、逃亡中に高野山中で凍死、という悲惨な最期でした。
また、ドラマでは「聖泉真法会」最初の訪問者は如月秋瞑(美波)でしたが、原作では徳岡雅子という人物。
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ドラマ版にも徳岡雅子は登場します(松井玲奈)が、金髪の容姿は原作の伊藤真実に当たり、設定も違う部分があります。
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伊藤真実もドラマに登場(川島鈴遥)
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他の宗教団体から逃げてきて第5話ではまだ「聖泉真法会」に入信していない設定ですが、原作での伊藤真実の設定はキリスト教系の宗教団体にいた経歴があり、「聖泉真法会」入信後も家族によって洗脳を解くためと言う理由で訳の分からないスクールに入れられたり、この人物も悲惨な人生。
またドラマでは徳岡雅子が心中事件を起こしましたが、原作ではサヤカという人物が事件を起こしました。
「聖泉真法会」発展のキーパーソン山本広江(石野真子)は原作で「人間性おばさん」と呼ばれますが、やはり重要人物です。
原作ではまさかの脱会理由。まさにオカルト、まさにホラー。
ドラマ第5話で登場した増谷(奥野瑛太)は、原作では「人間性」を感じさせない、ロボットのような人物。奥野瑛太がご演じになると知り、楽しみにしています。
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いかにもアヤシイ人物、石橋蓮司演じるところの石坂はドラマオリジナルキャラと言ってもいいくらい、原作とは違うイメージ、というか、キャラが濃い、濃すぎる。嫌いじゃないわ、むしろ好き(笑)
原作の石坂はドラマほどの大物感も存在感もありません。しかし「聖泉真法会」を大きく、豊かにする人物には変わりありません。
原作には実在する宗教団体の名前や事件がさりげなく出てきます。記憶のかなたとなってしまった、あの事件、この事件、篠田節子の取材力にも圧倒されました。
ところで、この『仮想儀礼』は2004年4月~2007年5月号の『小説新潮』に連載された作品。連載開始から20年近く経ってのドラマ化に疑問がわき、インターネット上を少し見たところ、こういうお言葉を発見↓
【制作統括/髙城朝子コメント】
実はこの企画、「宗教をコメディに?テレビではちょっと…」と何度も振られ、なかなか成立しませんでした。日本のテレビにおいて「宗教」とはアンタッチャブルなテーマなのです。
ドラマでは
「それを作れば彼がやってくる」
というお告げのような声が流れたり、かるーいノリで”宗教ビジネス”を思いつきます。
軽いノリは原作も同じですが、”9.11”のニュース映像を観ながら、宗教という虚業が実業に勝った、という思い付き。家も仕事も失い、生きる気力を失っていた主人公が久々に生き生きとしたという、作中、主人公自らも思っていますが不謹慎極まりない場面です。
しかしながら、この不謹慎さすらラストシーンに意味を持ってくるので物語の組み立てもすごい。
イヤなお話ではありますが、一人の人間の中に宇宙を観るような、壮大なストーリーと感じざるを得ません。
ドラマは中盤に差し掛かり、いよいよウハウハの状況、ドラマ第1話の冒頭シーンのところまで来ました。(ドラマ第1話では儲かってしょうがない”現在”から2年前にさかのぼります)
原作で私が面白いと感じたのは、上巻終盤から下巻始め。
この”事件”はドラマでどう描かれるのか、はたまた描かれないのか、ドラマはコメディで終始するようで、また私自身もドラマにはそれを望んでいます。
原作でキニなったのは、主人公正彦が”女はいやだ”と思うシーンが多かったこと。同時に登場人物の女性ほぼ全員下半身がだらしなかったことも不快でした。
特に、下巻後半の正彦が女性信者の集団暴行に遭うシーンは要らないなあと思うくらいでしたが、同時に”聖”や”性”へのアンチテーゼというか、それらのことをもっと深く考えるきっかけにもなるのかなと思いました。複雑。
以上、原作とドラマの感想ですが、私自身は両方楽しめ?ました。
いやドラマは後半へ続きますが。
今夜いよいよ最終回【追記】原作ラストネタバレ
中盤まで軽いノリできたドラマでしたが、原作と同じく回向法儒(目黒祐樹)の買収を断ってから、あれよあれよの転落の一途。原作では回向法儒の手のものによって石坂が消されたであろうと書かれていましたが、ドラマは匂わせのみでしたね。
ゴタゴタが次から次へと起こり、信者もどんどん離れるのは原作と同じ展開ですが、原作では完全に独走している秋瞑ら女性信者が半ば正彦を拉致するような形でワゴン車で逃げ回る旅を始めます。旅先では女性信者による殺人事件が起こり、喘息発作がひどくなった矢口は命を落とします。
最終的に警察に捕まった正彦と女性信者たち。
飽く迄自発的に何もかも行った、正彦の指示ではないという女性信者たちと食い違う証言をする正彦。全て自分の指示であったと言い、判決が下される━
正彦は軽い気持ちで立ち上げた「聖泉真法会」が自分の手を離れ、コントロール不能になってゆくのをなすすべもなく見ていて、巻き込まれる形で警察に追われる身になったのに、なぜ信者をかばったのか、それが宗教が生まれる、ということなのかな、とドラマ最終回のタイトルを見て思いました。
ドラマでは矢口が恵法三倫会の信者だったことになっていましたが、原作は違います。矢口が同情から関係を持ってしまった信者も別のキャラクターですが、原作は本当に登場人物が多く、それぞれのキャラも濃いので、ドラマ用にまとめるのは大変だったんじゃないかと勝手に思っております。
また、なんだかんだで正彦も矢口も悪人ではない、むしろお人好しですらある人物だと思うので、ドラマではなんとか希望が見える終わり方をしてほしいと望んでいるのですが、どうなることやら。
せめて、矢口は生かしてほしいところです。
※以上全て敬称略
最後までお読み戴き
ありがとうございました🍀
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