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#ナゼキニ ブログ筆者の猫目宝石 (id:nazekini)と申します。
2022年、令和4年は松本清張没後30年だそうで↓
松本清張原作とうたった映像化作品を多数観るチャンスがありましたので、この機会に未読の原作本と合わせて楽しもうと、
私も清張沼にハマってみる?キャンペーン(キャンペーン?)
を始めました。
今回は『駆ける男』について。
よろしくお願いいたします。
『駆ける男』とは
『駆ける男』とは、文藝春秋発行の月刊誌『オール讀物』で1973年=昭和48年に連載開始された作品。1977年=昭和52年に短編集として単行本化された『馬を売る女』に収録されています↓
『駆ける男』あらすじ
村川雄爾、英子夫妻は亀子ホテルの特別室に宿泊していた。一方、蒐集家である山井善五郎はその特別室を物色しようと同じく亀子ホテルに宿泊、村川夫妻が亀子ホテルと渡り廊下で繋がった蓬莱閣へ食事に出た隙を狙って特別室に入り込みます。
食事のあと、女中頭の鎌田栄子を見た村川雄爾は「あいつがいた」とつぶやくと、脱兎のごとく駆け出し、急傾斜の渡り廊下を走り続け心臓麻痺で息絶えてしまう。
そんな騒ぎになっているとは知らない山井善五郎は、村川夫妻留守の部屋の床に球根のようなものが落ちているのを見つけ、花好きの彼は戦利品とともにそれも持ち帰る━
ドラマ「駆ける男」は1980年=昭和55年にテレビ朝日系列「傑作推理劇場」で放送されました。
”駆ける男”村川雄爾役に田中明夫
村川の妻英子役に浜木綿子
宿泊施設専門の蒐集家山井善五郎役に常田富士男
物語を進行させてゆく刑事役として、山城新伍
村川の先妻に瓜二つの旅館の女中頭役に日高澄子
旅館の板前役に松橋登
村川の先妻の娘役に長谷直美
がご出演。
企画は霧プロダクション、監修は野村芳太郎
『駆ける男』原作とドラマの相違点
原作『駆ける男』では、まず蒐集狂についての話から山井善五郎という人物の描写で物語が始まるのに対し、ドラマ「駆ける男」は、村川夫妻が旅館で食事をとるシーンから始まります。
まず事件発生するのがドラマ、一方小説では中盤にならないと事件は起きません。
またドラマでは村川の先妻に瓜二つという女中頭が登場しますが、原作ではその女中頭は村川が若いころ同棲していた人物として登場します。娘もドラマオリジナルの登場人物。原作では先妻の子は息子3人、遺産を英子と分けたというたった一行の描写でしか登場しません。
一方、犯人(実行犯)は、原作では最後の最後まではっきりしませんが、ドラマではいかにもアヤシイ登場の仕方です。
昭和の2サス=推理ものの2時間ドラマは、自分の親が観ていたものを横で観ていたので気づきませんでしたが、今観てみると、犯人がわかる設定(キャスティング)になっていたんですね。
松本清張は、推理もの、探偵小説についてはトリックよりも動機に重きを置いてご執筆されていたようなので、犯人そのもののネタバレは重要ではなかったのかなあ、とも感じた今回のドラマ視聴でした。
ドラマは競馬のシーンがちょこちょこ挟まれて、刑事の趣味?のようでしたが、原作では刑事が出てくるのはクライマックスのみなので、これもドラマオリジナルキャラクターでしょう。
『駆ける男』ネタバレ感想
今回は本、ドラマ、それぞれ楽しみました!
ドラマは何といっても昭和の2サス感たっぷりで、山城新伍演じる刑事のコミカルな演技が懐かしく感動的でした。
残酷なシーンもなく、定番?のお色気シーンみたいものもほとんどなく、のんびりゆったり、ほのぼの楽しめたのがドラマ、一方の原作は一見関係のないような”伏線”が一気に回収されていく様が心地よい作品でした。
今回、つくづく清張は短編がいいな、と思いました。
謎解きに関して、私は村川が飲んでいる”薬”と旅館の料理でだいたい想像がついたのですが、これはミステリー好きにはピンとくるところでしょう。
”伏線”もコレ!とわかるのですが、どうつながっていくのか、先が知りたくて一気に読みました。
ここからネタバレ
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村川夫妻はかなり年齢差があるという設定で、村川は若い妻のために”ヨヒン”と呼ぶ強壮剤を服用していましたが、これが伏線(笑)
この”ヨヒン”の説明で、アルカロイドが神経系統に作用することを読者に説明しています。私自身は『BANANA FISH』などで観て覚えていたのですぐにピンときました。
が、清張はここで、この”ヨヒン”を村川が服用するのは妻の英子のためであり、英子自身の利益のことだから、その量を間違えて夫の健康を害しては元も子もないと著述しています。そこがちょっぴりミスリードの感もあり。
部屋の鍵をかけずに夫妻が出かけるのですが、それについてもドアが錆びついていたとか、いかにも鍵をかけないことがそう不自然なことでもないかのように書いていたのが不自然😂
また、夫妻の食べた料理のなかにヤツガシラという芋料理が出てきたり、多くのヒントがちりばめられていて、トリックそのものはミステリー好きには簡単に見抜けると思います。
清張節とでも言いましょうか、謎が解けたら一気に終盤、決定的なひとことと犯人の動作の描写でフィニッシュ!見事でございます。
長編も読みごたえはありますが、雑誌の連載という仕組み上(仕組み?)同じ説明が何度も出てきたり、風景の描写も多く、飛ばし読みしがちな私には、清張は短編の方が一気に読めて楽しい、娯楽小説(殺人事件で娯楽という表現は憚られますが💦)
細かいところは都合がよすぎる嫌いが無きにしも非ずですが、そこは清張ご自身もおっしゃられている通り、娯楽小説なので、突っ込むところではないと私は思います。
また、この作品で初めてハシリドコロという植物を知りました。
薬として使われることがあるとのことで、薬オタク気味の私としては知らなかったのがちょっと不思議ですらありました。
そこらへん(そこらへん(笑))に生えていて、春先はふきのとうと間違って食べる事故が起きたりもしているそうです。
興味深かったのは、ハシリドコロの中毒症状が狂ったように走り回る、ということ。
幻覚をみるから走って逃げる、ということのようですがちょっと納得いかず、機会があればもう少し調べてみたいと思っています。
小説としては楽しみましたが、動機としてはワンパターンだった『駆ける男』
若い女性が年配の男性の資産を狙って、という今回のパターンでしたが、金、地位、女、というのは食傷気味。
しかし、当時はそれが娯楽として求められていた、と考えると、庶民のお金持ちに対する夢と憧れ、妬みを絶妙に昇華していたのが清張小説で、清張は読者のニーズを確実にとらえ応えてきた、サービス精神あふれる人だったのだなあ、と思った『駆ける男』の感想でもありました。
※以上全て敬称略
最後までご覧いただき、
ありがとうございました😄
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