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ミステリ好き、筆者の小幡リアン@nazekiniと申します。
今回は、私がBSでの放送当時から好きで観ている「世界サブカルチャー史 欲望の系譜」という番組について記事にいたします。
よろしくお願いいたします。
- 「世界サブカルチャー史 欲望の系譜」とは
- 世界サブカルチャー史 欲望の系譜4【21世紀の地政学ゴシック編第1回】
- ゴシックとは
- Chapter 1 Forgery 第1章 偽作
- Chapter 2 Monster 第2章 怪物
- 世界サブカルチャー史ゴシック編の感想
「世界サブカルチャー史 欲望の系譜」とは
「世界サブカルチャー史 欲望の系譜」とは、2022年にNHK BS放送で始まった番組。
シーズン1はアメリカの戦後から10年ごとに時代を切り取り、当時流行った映画作品を軸に、どうしてそれが流行ったのかなどを時代背景とともに解説するシリーズでした。その後、シーズン2はヨーロッパ、シーズン3は日本と舞台を変えて放送された、約90分の番組。
シーズン3からはEテレでも放送開始、BSでの90分の放送を30分ずつ3回に分けて放送されています。
シーズン4はアイドル編、ポップス編、ヒップホップ編、ゴシック編など、ジャンル別に掘り下げて放送。
映画、ポップス、流行、社会風俗…、夢と現実の交差点、サブカルチャー。 メインからこぼれ落ちるエネルギー。人々の心の奥底を覗くとき、そこに見え隠れするのは、時代の痕跡か?それとも大衆の欲望か? 大好評の「アメリカ編1950ー2010s」に続き、シーズン2「ヨーロッパ編」、シーズン3「日本編」と、それぞれ60年代から90年代まで激動の時代、社会の空気の変化を追う、想像力の旅。 超大国の光と影、冷戦の緊張と緩和の中、時代のマグマはどこに噴出する? 世界の今、これからを考える為の異色の歴史エンタメ・ドキュメント。語りは俳優の玉木宏。
番組ホームページより引用
世界サブカルチャー史 欲望の系譜4【21世紀の地政学ゴシック編第1回】
2024年6月7日に放送された「世界サブカルチャー史 欲望の系譜4 21世紀の地政学」はゴシック編でした。
ハロウィンの仮装で賑わう渋谷の映像から始まります。
「死と結びつく闇と怪奇のサブカルチャー
人はそれをゴシックと呼ぶ」
「闇でつながる欲望の系譜
ゴシックで心の隙間を埋めようとする人々の意識のありよう
その秘密とは」
ゴシックとは
ゴシックとは、元々は古代ゲルマン系の民族ゴート族(Gothe)を形容する言葉だったそうです。
「3世紀から5世紀にかけ
ローマ帝国に攻め入り破壊と強奪を繰り返したゴート族
その振る舞いから
野蛮で粗野なものの代名詞となってゆく」
と玉木宏のナレーション。
14世紀ルネサンス時代
北ヨーロッパの巨大な教会を当時のイタリア人が、装飾が過剰で野蛮なゴート族が建てたようだと、侮蔑を込めた意味で「ゴシック建築」と呼ぶようになったのが、”ゴシック”と言う言葉が広まるきっかけになったっようです。
18世紀のイギリス、産業革命の時代に「ゴシックロマンス」と呼ばれる小説が登場します。
特徴は、古い城や館を舞台に怪物たちが活躍する、というもので、それが”ゴシック”を”闇と怪奇の世界観を表すもの”にしたとのこと。
Chapter 1 Forgery 第1章 偽作
1920年代
第一次大戦後のアメリカは、ヨーロッパへの輸出拡大で経済が急成長、好景気に浮かれた世情でしたが、1929年の世界大恐慌の始まりでそれが一変します。人々の不安と不満が膨れ上がっていた1931年に公開されたのが、トッド・ブラウニング監督の映画「魔人ドラキュラ」
イギリスのゴシックロマンス小説、ブラム・ストーカーによる『ドラキュラ』(1897年)
公開初日に失神者が出たと報道され、公開から2日間で5万枚のチケットを売り上げたのだそう。
”This picture can at least boast of being the best of the many mystery films.”
「数あるミステリー映画で最高の一作」ニューヨークタイムズ1931年2月13日
ランカスター大学英文学・文化キャサリン・スプーナー教授(『コンテンポラリー・ゴシック』著)
「吸血鬼は常に侵犯的な力を持ち
あらゆる種類の倫理を犯すメタファーなのです
その背徳的な力を映画は利用しました
だからこそ吸血鬼には永遠の魅力があると思います」
1789年のフランス革命は、激しい暴力と殺戮で断行され、当時のヨーロッパ全体を揺るがした━
「1790年代 ヨーロッパではフランス革命の
影響が広がり 社会に大きな衝撃を与えました
かのマルキド・サド侯爵はこう書いています
”人々は目の前で起きている暴力に麻痺してしまい
日常に楽しみを見出せなくなった
超常現象など 現実よりもっと恐ろしい
物語がないと満足できなくなったのだ”」
1764年、ホレス・ウォルポールによって書かれた小説『オトラント城奇譚』はゴシックロマンスの元祖と言われるそうです。
「中世のイタリアの古城を舞台に、幽霊や悪魔が出没する怪奇小説だが、ミステリアスな雰囲気をより増幅するため、様々な演出が加えられている」(ナレーション)
ここで再びキャサリン・スプーナー教授
「ゴシック・カルチャーのはじまりといえば
ウォルポールの小説『オトラント城』ですが
ウォルポールは自分が書いたのではなく
中世の本を発見して翻訳したものだと嘘をつきました
本を売り出すと誰もが
中世の写本だと信じ興奮したのです
ゴシックのそういう側面を私は
”モック”=”まがいもの”ゴシックと呼んでいます
中身は本物ではなく”まがいもの”
からかったり笑える要素もある
これらの要素が一体になったのが
ゴシックなんです」
「魔人ドラキュラ」でドラキュラを演じたベラ・ルゴシは、ドラキュラの故郷とされるルーマニアの隣国ハンガリーからの移民、英語に東欧なまりがあったことも功を奏したとされているそうです。
Chapter 2 Monster 第2章 怪物
1931年2月の「魔人ドラキュラ」公開後、5月に「フランケンシュタイン」、12月に「ジキル博士とハイド氏」と立て続けにイギリスのゴシックロマンスを原作とした映画が公開されます。
キャサリン・スプーナー教授
「1931年はゴシックの怪物にとって きわめて重要な年です
世界的不況でセンセーショナルな作品が望まれる状況に
ゴシックがぴたりと合いました
「ジキルとハイド」「ドラキュラ」「フランケンシュタイン」の
3作品はどれも19世紀の小説が原作で
演劇としてロングラン公演を実現するなど
大きな成功を収めていました
興行主としてもヒットが見込める内容だったのです」
中でも最大のヒットとなたのは『フランケンシュタイン』
原作はメアリー・シェリーによるもので、1818年の作品
唐戸信嘉白鷗大学教育学部准教授
「死体をつぎはぎにして命を吹き込むということは
当時科学界で議論されていたこと
神だけが許されている”生命の創造”を
人間が人工的に行ってしまうのは不遜
テクノロジーが神の領域を侵すことを疑問視してた」
キャサリン・スプーナー教授
「この映画が描いた”怪物対暴徒”の争いは
当時のアメリカ社会の混乱を映し出していました
子どもを殺した恐ろしい生き物として
怪物は描かれているけれど
ボリス・カーロフ演じるその怪物に
すごく共感できるし同情できる理解できると感じます」
唐戸信嘉准教授
「人間が見た目だけで恐れ差別する
近代社会はいいことずくめではない
人間の悪い部分も残っている
ユートピアではないということを怪物に語らせている」
『ジキル博士とハイド氏』は1886年に書かれた作品。
作者はロバート・ルイス・スティーブンソン
当時、心の中に潜む別人格という設定にはまだリアリティーがなかったのが、1916年、ジークムント・フロイトによる『精神分析学入門』を発表し、人間の深層心理の存在を明らかにすると事態は大きく変わるとナレーション。
アメリカでも心理学ブームが巻き起こったという背景があり「ジキル博士とハイド氏」が映画化。
唐戸信嘉准教授
「今の世の中では
隠れた人格・欲望をコントロールしていることは誰でも
何となくわかっていることですけど
20世紀フロイトの心理学が出てくるまでは
人間の中に隠れた部分があるとは誰も思っていなかった
フロイトが出てきて
人間のネガティブな部分はコントロールされているだけ
いつ表に出てくるか分からない
怪物は外側ではなく内側にいる
自分自身が怖いというのは
ゴシックの重要な新しい要素」
1945年に第2次世界大戦が終戦を迎えると、ゴシックへの関心は日本でも高まることとなる━
世界サブカルチャー史ゴシック編の感想
ゴシックについては知らなかったことばかりで、最後まで興味深く視聴、特にゴシック建築の語源が、野蛮で下品なものと言う意味あいを持っていたというのも新鮮な驚きでした。
また、30分バージョンになって見やすくなったと思います。
90分の頃も見ごたえがあり、好きでしたが、いったん見始めると長くなる(メモを取ったり)こともあり、90分番組でも3時間くらい要していたので、私は30分の方が気軽に視聴できるようになりました。
最後までお読みいただき、
ありがとうございます。
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